讀賣新聞(3月27日) 談話 瀬戸佐太郎

“悲”これが詩だ

牧野氏の死を嘆く、詩人村長

昨年八月悪友牧雅雄に逝かれまたも親友牧野信一氏の悲報に接し果敢ない人生の渦をみつめ、只一人哀愁の涙を浮かべてゐる詩人村長がある、上郡山田村長瀬戸佐太郎氏だ、互いに文学を論じ、詩を詠じ酒を交して苦楽を共にした友に逝かれ皮肉な世の廻り合はせを泣きながら

  哀悼の詩、そんなものまだ考へたくない、たつて一首と望むなら作らう「悲」これが僕の詩だ牧野が死ぬとは、あいつらしくもない、僕は信じてゐた、彼奴現在の行詰つた文壇を打開してくれるものと…それだのに死とは…

世を達見した詩人村長瀬戸氏の頭には当分はあの綺麗な詩は浮ばぬ事だらう【写真は瀬戸氏】