東京

７月、葛西善蔵死去。享年４２歳。

小田原海岸でのマキノ君たち。（信一、せつ、英雄、義妹修子、詩人・作詩家藤浦洸）

小田原

夏から秋にかけて、箱根塔の沢に滞在した宇野浩二と往き来する。牧野は，この頃経済的にかなり切迫していたようだが、亡父がアメリカから持ち帰ってきたと言われる様々な洋書を含め、旺盛な読書生活を送る。

「牧野と私とが差し向かいになって挟んでいる古風な卓袱台（ちゃぶだい）の裏側には差押の札が張っているという話であったが、牧野がもしその話をしたとしても、話ながら、彼は彼独特のクフクフというように聞える穏やかな笑い方で笑うので、聞かされても、彼が笑う瞬間に、聞き手は差押の札の事は忘れてしまう。」（宇野浩二「牧野信一の死と芸術」）